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新聞に載らない内緒話

「あの頃」の空
               
 年を取ると昔話が長くなる。
 中学時代の友人2人と飲んでいるとき、ふと「あのキャンプ地は今でもあるだろうか」と話題になった。
 今から45年以上前の話である。夏になると国鉄(現JR)を乗り継いでキャンプに出かけた。横浜線橋本駅からバスで三ケ木、ここで乗り換え青野原(神奈川県相模原市)へ向かった。テント2張り、食料を背負って1週間ほどの冒険であった。
 ある日、思い立って現地を訪ねることにした。三ケ木までは頻繁にバスは通っていたが、その先はわずか1日数本の運行。そこで橋本駅前でレンタカーを借りた。
 何しろ中学生時代の記憶である。まして商業施設としてのキャンプ地ではない。地元民も通わぬ荒れ地の突き当たり、目印もない杉木立を分け入ってV字谷を下らなければならない。はたして、その侵入口が見当たるかどうか。
 「たしか谷の上空に電線が見えた」「見上げるような、切り立つ崖だった」
各自、遠い記憶を手繰りながら45年前を目指す。1時間ほど候補地を歩き回った末、どうやらここであろうと思われる入り口を突き止めた。昔はささやかな、つづら折りに道があったが、下ってみると杉の根元は緩く、ずぶずぶと沈み込む。急坂を前に、右膝に持病を持つ私はここで断念した。
唯一、元気の良い男が猿のようにスルスルと、木々に絡む蔓(つる)と微かな川のせせらぎを頼みに降りてゆく。当初こそ草をかき分ける物音が響いたがそれもいつか途絶え、静寂が周囲を制した。30分以上が経過した。思わず携帯電話に手を出す。
「大丈夫か、生きてるか」
両手をふさがれているのだろう。返事がない。数分後であろうか、着信音が響いた。「今、着いた。昔のままだ。水がきれい。わき水も昔のまま」と感激したような声が飛び込んできた。
「写真、撮ってくれ」
便利な時代である。スマホで撮影した写真が即座に届いた。「本当だ。飛び込みに使った大石も、むき出しの岩肌も、石ころだらけの河原も昔のまま」。中学生の「あの頃」はいともたやすく蘇った。
レンタカーを返却し、駅前の居酒屋で一杯やりながら、画像、動画を前に昔話に花が咲いた。
当時5人居た仲間は、1人が行方不明、もう1人は2年前肺がんで亡くなっている。
酔いが回ってきた。弛んだ視線の先に、ぼんやり、夏空を見たような気がした。
盆火のように揺れて、「あの頃」の空が中空に漂っている。

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