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新聞に載らない内緒話

咲くまで3年…

 歳を取ると、興味の対象も替わるようだ。
 5月の始め、黄金週間の最中に日比谷公園を散歩した。日本橋で小さな市が立ったので、そのついでに、何げなく寄ったのである。
 公園の、はずれのスペースで「山野草展」を見つけた。植物には関心が薄い。花を見て美しいとは思うが、何しろ名前が覚えられない。普段なら通り過ぎるところだが、ふと足を向けてみたくなった。人影もまばらな会場にはいると、コの字型の展示台があり、数多くが並べられている。「ウラシマ草」は浦島太郎の、釣り糸を垂れた姿で、「ユキモチ草」はシャンパングラスのような円筒形、中心部に、まるで雪のように白い〝餅〟がくるまれている。「ヒトリシズカ」の、清楚な花は初めて見た。
 「皆さん、山野草教室が始まります」という係員の声でわれに返った。
 振り向くと、会場の隅に小机と、折り畳みのイスが10ばかり。居合わせた老夫婦たちが初夏の日差しの中、おぼつかない足取りで席を埋めた。出向くと、紙で包んだ野草の種「ムサシアブミ」を一袋くれた。どうやら、その育成についての講義が始まるらしい。
 古びたアルペンハットをかぶり、薄手のジャンパー。ファスナーを首まで巻きあげた、きまじめそうな老先生が小机の前で何やら講義を始めるようである。
 手元には真っ赤な、ザクロのような実を持ち、これをトウモロコシの実をはぐような手つきで数粒、取り出した。意のままにならぬ指先で、ゆったりと。
 「これを水につけて、赤い表皮をはぎ取って、種を土中に埋めてください。1年ごとの植え替えを忘れないように」
 そんな内容であったか。老先生の講義はまるで、耳のそばでささやくようで、聞きづらいが、老夫婦たちは身を乗り出して質疑応答を繰り返す。
 そのうち、ひとりがおずおずと尋ねた。
 「ところで、この野草が咲くまでにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?」
 半年か、1年でモノになると思っていたら、その返事は意外だった。
 「そうですね。3年でしょうか」
 老先生の、事もなげの返事に、席には失望とも、苦笑とも、小さなさざ波が広がった。花が咲くまで3年、老人たちの月日は待ってくれるだろうか…。
 すると老先生、静かに言った。
 「私は今、90歳です。種を植え、育てます。綺麗に咲いてくれと丹精しているうちに、いつの間にか90歳になりました。そう考えると、3年は、そう長くはありません」―。
 ◆お知らせ 知友が、癒やし系の、大人の童話を書いています。興味のある方は「any moka」で検索を。

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