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新聞に載らない内緒話

もう一度、ロッテ担当

「出来の悪かった子供に久しぶりに会ったら、なんとも素晴らしい青年に育っていた。そんな感じかな」。かつてのロッテ担当記者の感慨である。

 日本シリーズが終わった。ロッテの強さばかりが目立った4連戦だった。テレビの画面を眺めながら、かつてのロッテ担当記者はつぶやくのである。「それにしても…」と。

 「千葉」というより、一世代前のロッテは「川崎」のイメージだった。JR川崎駅を降り、国道132号線を下る。雑居する商店街、ビル街を抜けると空が広がる。右に曲がると球場のゲートが見えてくるが、通行する人たちのお目当てはさらに直進すると現れる競馬場、競輪場である。歩を進めれば京浜工業地帯に続く。そんな労働者の街にすっくと立ち上がった川崎球場だった。周辺は汗水流した労働後の、すべての欲望を満たすワンダーランドではあったが、それはやけくその消費にまみれた一帯で、一攫千金にあぶれた男たちは不気味な息づかいで徘徊した。プロ野球の開催日、球場は健全な日常を取り戻すが、照明灯の、やけに細い鉄骨が数本、空に伸びた風景の寂寥感は消しようがなかった。

 後楽園、甲子園とは一風変わった球場ではあった。が、だからこそこの場所は人間の存在感があり、人が生きてゆくための教訓が転がっていた。

 「観衆5000人」とは発表はされたが、スタンドには記者席から指折り数えると実は100人ほどしかおらず(すでに売れている年間シート分を観衆に加算していたのだが)、「公式発表」とは時によって嘘をつくものだと言うことを教えてくれたし、薄暗い、鉄格子(てつごうし)のはまったネット裏のトイレ(ある時期まで女子用すらなかった)は映画の監獄ロケに使われ、ガラガラのスタンドは公式戦、インプレー中にもかかわらずドラマの撮影に利用された。人気がないとこんな理不尽な振る舞いにも耐えなければならないのか、と考えさせられた。後に首位打者となるある選手は試合前のベンチに、出前のラーメンを持ち込んで、それをすすりながら三冠王・落合のバッティング技術を盗んだ。12月24日の記者会見が終わると、ロッテリアの、クリスマスケーキ半額購入券を配った球団は、忘れかけていた家族団らんを思い出させてくれた。

 チームは千葉に移ったが、このチームの底に流れるのは、野球だけではない、生きてゆく上での、社会での経験則であった。

 だから、かつてのロッテ担当はぼんやりつぶやくのである。

 「もう一回、このチームを担当してみてぇなぁ」と。


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