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新聞に載らない内緒話

人生の、幕間
              
 給料日であったらしい。
 アルミの引き戸に、どんよりとした赤ちょうちん。東京は南のはずれの、小さな居酒屋チェーン店の夕刻。
ひとり、カウンターからの風景である。
 焼き場の大男が小さな茶封筒を受け取ると、その場にしゃがみ込んだ。狭雑な厨房。おかげで他の者の、身動きが取れぬ。
手にしたハサミで封を切ると、つまみ出した紙片にしばし見入った。その大きな背中をながめていた店長がニヤリとして尋ねた。
「どうだった?」
「前の、会社のボーナス時期の半分ぐらい」
「だろうな、そんなモンだよ」
転職1カ月、初給与である。
「前の会社のボーナス時期の半分」がいくらか、想像もつかぬが、まぁ「そんなモン」なのである。
夕刻4時から明け方4時までの労働。それに見合うはずもない、ということだろう。
店前の、路を右に行くとラブホテル街で、左に曲がると葬斎場がある。
渋る女の、最後の説得にかかる男。弔問を終えたばかりの、黒服たちの高笑い。極楽も地獄も、明も暗も一緒くたの、すれっからし人生万華鏡。
「ヘッ」と笑って大男は気を取り直して焼き場に立った。「でもなぁ。前の会社より、ここのほうがよほど居心地がいいや」
日が暮れて、安酒とモツ焼き目当ての客が群がり始めて、爆笑、微笑、頬笑、破顔、ついでに嬌声、罵声、怒声。持ち合わせたすべての感情をぶちまけて、場末は、「らしく」なってゆく。
「おはよーっす」―アルバイトが三々五々駆けつけ、客の間をキビキビと動いて、店は佳境となる。確かあの子は今春、近くの小さな会社に就職したはずだが、夕刻だけ手伝いに来る。外国で英語の勉強をするという女の子はその渡航費用を稼ぐため愛嬌(あいきょう)をふりまく。中退したあの子は、学校では見せたことのない笑顔で注文を取りに来る。
「そんなモン」の給与で、誰もが一所懸命働いている。
そんな彼らをながめながら、なぜか頬が緩む。
勝手な思い込みである。
オジサンはフッと勇気をもらったような気分になって、家路に着く。

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