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新聞に載らない内緒話

45年ぶりの再会
              
 彼は小学校近くの、水色の、トタン屋根のアパートの2階に住んでいた。本来、青空を連想させるはずの外観はすでに赤銅色のまだら模様で、玄関に踏み入れると6畳ひと間で、兄と2人で生活していた。両親の姿を見たことはなかった。
 兄は線路脇の小さなレコード店で働いており、そこは国内外の、最新の音楽で埋まっていたから、場末の町の、大げさに言えば、文化の「窓」といってもよかった。
 兄弟の、人生の〝頼み〟はたった1本のギターで、ともに抜群のテクニックで周囲を驚かせたが、私とバンドを組んだ、同級生の弟は軽く兄を凌駕(りょうが)した。
 中学3年、であったか。よく学校をさぼって新宿南口にあったライブハウス・アシベ(現在は歌舞伎町にあるらしいが)に出掛けた。すでにプロを意識していたのだろう、彼はいつもギターを携え、ステージのかぶりつきで身を乗り出した。
 まだ沢田研二も萩原健一も前座扱いで、ステージのトリはエレキの神様、寺内タケシだった。ある日、意を決して彼は楽屋に飛び込んだ。パンツ一丁、マネージャーにウチワで風を送らせていた寺内タケシに「聴いて下さい!」と土下座した。そんな飛び込みも珍しくなかったのだろう。苦笑いを浮かべたが、あっさり了承した。弾き出したのは当時、寺内タケシが編曲して話題を呼んだベートーベンゆかりの「レッツゴー運命」である。
 アンプもなく、鉄弦の乾いた金属音、シャッ、シヤッという鋭利だけが楽屋に響いた。
 「お前、いくつだ」
 「中3です」と答えると「卒業したら俺の所へ来い」。これが演奏を聴き終えた、寺内タケシの返事だった。
 以後、私は高校に進学し、彼はプロの道を歩んだ。何かの拍子にテレビで、彼がバックバンドで演奏する姿をみとめた気がするが、その後、〝H〟という通好みのバンドが評判を呼んでいると聞いたとき、ひょっとしたらと思ってみたりもした。
 最近、彼の消息が分かった。〝H〟は彼のバンドで、しかし交通事故に遭い一時期引退していたようである。
 かつてのファン向けライブをやると聞き、12月初旬、六本木のライブハウスに足を運んだ。45年ぶりの再会になる。早めに到着し、音合わせ中の姿を見たとき、中学時代の面影は無かったが、笑った時のエクボで確信した。
 「K!」と声を出したら一瞬、けげんな表情を浮かべたが、「S中学の俺だよ」と問い掛けたら目を丸くして手を伸ばしてきた。
 4時間、久しぶりに全身音まみれになった。中学時代、教師に「不良!」と名指しされたが、それでも自分の道を貫いた彼が誇らしい。国内屈指のギタリストは事故の後遺症で、少々足を引きづったが、天賦の指さばきはネック上で健在だった。

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