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新聞に載らない内緒話

爪を切る
              
 会社のデスクで爪を切っていたら、なにやら、ひどく年を取ったような気がした。
傍らのごみ箱を引き寄せ、背中を丸めて、引き出しから取り出した爪切りでパチンパチンとやっている。
 通勤途中、ちょっと爪先に違和感を覚えた。すぐに爪切りを持ち出すほどのことではない。いつもなら自宅の、休日の昼下がりにでも済む用事である。
 新聞社の、乱雑な編集局だから違和感がないのか。普通の会社で、仕事中にこんなことをしたら上司から睨まれるのだろうか。経験がないからわからない。
 もっとも定年延長の、嘱託サラリーマンが昼日中から社内で爪を切っていたら、いくら新聞社でも若い人たちはゲンナリするだろうな。
あたふたと切り終え、ボンヤリと日常に戻った。
 父親が亡くなって昨年が七回忌だった。不肖の息子はすっかりそれを忘れて、慌てて墓参に駆けつけるという体たらくである。なに、親戚といってもわずかで、それも皆高齢だから法事に出向くのもやっとの状態だ。かえって余計な気苦労をさせなくてよかったと勝手に解釈した。
とんだ親不孝者である。
 父親は、寝たきりだった母親を介護しつつ、その疲れであろうか脳梗塞を発症し右手、右足が不自由になった。気丈な人でリハビリをこなし、歩く方は人並みに回復したが、右手だけは最後まで元に戻らなかった。
 時折、爪を切ってくれと頼まれた。足の爪が切れなかった。家人はいるが、とりわけ足の爪だけは私の仕事だった。たまの休日を待ちかねたように催促した。切り終えると「あー、サッパリした」と笑った。
 晩年、医師からは余命あと3ヶ月と宣言された。父親には内緒にしていたが、右足にむくみが出、黄ばんだ下肢は、丸太ん棒のようにふくれあがった。行く末は、本人も気が付いていたろう。
 もう長くはないな。そう思いながら、血の気の失せた、乾ききった爪に刃をあてると、そばから小片に砕け、床に、まばらに落ちた。
 小爪を拾う、という言葉がある。
 わずかな言葉じりをとらえて非難する、の意である。死語に近い。
 七回忌を失念した私を父親は怒っているであろうか。
 年忌を忘れるなど「わずかな」ことでは済まされまい。

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