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新聞に載らない内緒

時の流れ
              
 夕方、仕事を終えて飲みに出る。さすがに寄る年波で、馬鹿な飲み方はしなくなったが、それでも毎日、どこかの町で一杯、やる。
 5月は神田祭、三社祭と大きな祭りが続く。縁あって今年も神輿を担ぎにいってきた。昔は担いでいるのか、飲んでいるのかわからなくなるほど、神輿と酒は付き物だった。長い道中、休憩を挟めば、その場が酒盛り会場で、飲み過ぎて神輿が上がらなくなる失態もずいぶん経験した。
 もっとも、この手の馬鹿騒ぎは近年、御法度で、路上での煙草、酒はすっかり見られなくなった。まぁ、これも時代の流れで致し方ないが、かつてを知る者としては少々、寂しい。それでも、神輿を収めれば天下御免で、居酒屋へ繰り込み酒を飲む。
 その昔、「あの札付き」と形容された連中も還暦を迎えて、「孫が可愛くてね」と相好を崩す。それでもひとたび神輿の担ぎ棒を見ると、年甲斐もなく突撃し、7歳ほど年下の私はハラハラしながら眺めている。がっしりした体格は往年を想像させるし、荒っぽい人生を送ってきたのであろうが、そんな風雲の時期を経たからか、みんないい「おやじ」になっている。
 先日、山谷へ久しぶりに出かけ、地元の飲み屋で一杯、やってきた。山谷という地名はすでになく、台東区と荒川区にまたがるこの辺りは「山谷地区」と呼ばれる。泪橋(なみだばし)という、日比谷線・南千住駅から近いここが、山谷地区の中心で、60年代にマンモス交番を中心に荒れた場所である。
 懐かしくて、お目当ての店の暖簾をくぐると、意外や閑散としている。がらんとした店内に数人、労働者たちが酒をあおっていたが、大声を上げることもなく(もっともこの店は昔から大声は禁止だったような気がする)、なんだか別の世界へやってきたような風情である。
 「まぁ、今時こんなものでしょう。景気もよくないしね」。
 連れが、この男もかつてのお祭り男だが、「ここも三社祭に神輿が出ているんだよな」とぽつり。なるほど一部は台東区に引っかかっているから、さぞ立派な神輿があることだろう。それにしても、夜更けの町並みに往年の輝き(というべきか)はない。
道沿いに、コインロッカー屋があり、以前取材をしたものの、事情があって原稿化出来なかった。兄弟で店を経営しているのだが、「最近は荷物を取りに来ない人も多くなりました。木賃宿に泊まっても周囲が信用できないから、仕事の道具だけ預けて、消えてしまう人もいます」とのことだった。
酔っぱらって、三ノ輪まで夜の町をあるいた。15分ほどの距離だが、道中、誰とも会わなかった。

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