カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
Facebook
最新の記事
プロフィール

加藤 利教

Author:加藤 利教
Katoh's Roomへようこそ!

カウンタ
カウンタ2
現在の閲覧者数:
ブログ検索
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

新聞に載らない内緒話

純粋な男たち

ボクシングにまつわる連載原稿を書き終えた。
 小さなジムから日本タイトルに挑戦する有望選手が出、その試合までのジム内の人間模様、弱小ジムならではの悲哀、そして主人公となる24歳のボクサーを追いかけた。試合結果よりも、その過程が主眼で、勝つか負けるかは神のみぞ知る、と踏んでいた。
 それでも今年2月から、試合のあった6月2日までカバーしたから、あしかけ5ヶ月にわたる取材だった。他の取材との掛け持ちだから、ジムに常駐して取材したわけではないが、それでも暇をみつけては出向き、月7,8日はジムの空気を吸った。
 もともと野球記者だったから、ボクシングについては無知に等しい。しかし、付き合った選手、各ジム会長、トレーナー達、周辺の人物たちはいかにも純粋で、まじめで、一途で、まだこんな風景があったんだ、と眼から鱗の落ちる思いである。プロ、アマ野球の醜い事件の最中だったから、その思いはなおさら際だった。
彼らを見ていると、物事に「のめり込む」とはこんな感じだろうか、とふと思ったりもした。
 取材が進行してゆくにつれ、日本ボクシングコミッション(JBC)の事務局長、安河内剛さんが忠告してくれた。「ボクシングって、たとえば知っている人間がリングに上がろうものなら、耐えきれないものですよ。感情が吹き出しますよ。試合中、泣き出さないでよ。すこし選手にのめり込み過ぎていない?」と冷やかし半分で声をかけてくれた。
 原稿を書くのが商売だから、そんな心配は無用だが、それでもリング後方で試合のゴングを聴いた時、スッと血の気が引くのを感じた。「冷静に、冷静に」と自分に言い聞かせながら試合を追った。
 試合は残念な結果になった。左目上11針、右目上5針を切る、流血戦だった。
 試合後の控室に選手の妻が、1歳の長男を連れて現れ「痛いの痛いの、飛んでけぇー」と笑わせた。彼が医務室へ向かおうとすると、すれ違いざまに「ボクシング、やめないでね」と小さくささやいた。ジム会長は妻に「今後のことは、もう少ししたら話し合おう」とすわった目で伝えた。
 午後10時半過ぎに控室を後にした。地下からの階段を上がると、ほんの2時間前、超満員だったホールはすでにリングのロープもはずされ、人影は皆無だった。ジーンズと、シャツに着替えた彼が、荷物を肩にかけ出口に向かう。背中を追いかけると、
 「負けちゃって、スイマセンでした。せっかく原稿書いてもらったのに」。
 この夜、同じ言葉を3回聞いた。
 「なあに、こっちも54年間生きてきたけど、いつも負けっ放しだ」。
 そう返事をしたら、ニヤリと笑ってくれた。

スポーツ、芸能情報は日刊スポーツへ。
ご購読申込は朝日新聞飯塚西部販売店もしくは日刊スポーツ販売局0120(81)4356へ


スポンサーサイト

コメント

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。